名探偵の結婚 |
先日、山川方夫の「トコという男」を読んだ。 「法月綸太郎の新冒険」(法月綸太郎・著)の中で引用されていたからなのだが、 そこには「子持ちの名探偵がいないのは、彼らがみんな突然変異のミュータントだからではないか?」という事が書いてあった。 確かに言われてみるとその通りである。子供はおろか結婚をしていない名探偵のなんと多いことか。 そこで名探偵の結婚についてちょっと調べてみた。 結婚していない名探偵が多い理由の一つは、名探偵自身が結婚をのぞんでいない場合が多いのである。 例えば、シャーロック・ホームズは有名な女性嫌いだったし(親友ワトスンの結婚話を聞いて「お祝いは言わないよ」なんて言っている。 ちなみにこの時のワトスンの結婚相手は亡くなっている。) ホームズと同じ天才型名探偵の御手洗潔も「犬と結婚しようか」とか「結婚するなら飛び降りたほうがまし」なんて言っている。 ミス・マープルも若いころの恋愛で何かあったらしく一生独身ですごしている。 その他の名探偵たちも大抵はシリーズを通して一生独身なのである。 次にシリーズの途中で結婚または運命の女性に出会った名探偵の例をあげてみる。 まずは日本の三大名探偵の一人、明智小五郎。彼は文代さんという女性と結婚している。 彼女とは「魔術師」という事件で出会い次の「吸血鬼」という事件では冒頭で「素人探偵の有名な恋人」となっており事件解決後に結婚している。 ところが「黄金豹」という事件で明智探偵事務所が「千代田区に新らしくたった麹町アパートという高級アパート」に引っ越したとあるが、 「明智夫人は、長い病気で、ずっと高原療養所にはいって」いるので、この家には明智と小林の二人きりで、「まるで親子」のように暮らしているのである。 その後、明智夫人は二度と登場することはなかった。 不幸な結末に終わったのであろうか。 もう一人の三大名探偵、神津恭介は「輓歌」という一高(現在の東大)学生時代の事件で失恋して「苛酷と思われるような禁欲生活を送り出した」。 そして長い独身生活の後「成吉思汗の秘密」で大麻鎮子という女性と出会っている。その事件の最後に一羽の山鳥の飛び立つ音を 「恭介たちの新しい首途(かどで)を祝う祝砲の響きと思われた」とあり、二人は結婚するであろうと思われたが大麻鎮子はその後二度と登場することはなかった。 やはり何かあったのだろうか。 それぞれ名探偵という性質上事件にまきこまれたとも考えられるが事件なら作品になっても良さそうなものである。 ところがなっていないところをみると事件性のない何か他の事がおこったのであろう。 やはり名探偵は結婚が出来なく結婚したとしても不幸になるのであろうか。 確かに名探偵みたいな周りに対して影響力があるパワーの持ち主が いつもいっしょにいたら普通の人はおかしくなってもしょうがないのかもしれない。 その結果、不幸な結末になるのだろう。 さて幸せな結婚している名探偵もいないわけではない。 結婚している名探偵は少ないのだが例をあげると刑事コロンボ、おしどり探偵、タロット日美子、スタンリー・ヘイスティングズ君・・・。 こうやってみると幸せな結婚をしている名探偵は、いずれの場合も夫婦そろって名探偵または名探偵に負けず劣らずの人物なのである。 (コロンボの奥さんも実はミセス・コロンボというシリーズの名探偵。) 二人とも名探偵ならパワーの均衡も崩れないのだろう。 以上、結果をまとめてみるとやはり名探偵は人並みはずれた推理能力というパワーを持って生まれたミュータントであり、 常に一緒にいられるのはそのパワーと同等の物を持っている者のみである。 そして天才型名探偵ほど、そのパワーと均衡がとれる異性が現れる確立が低く結婚できないのであろう。 (うっ、断定してしまった・・・。(>_<)) 追記>ワトスン君や石岡くんがいつも名探偵と一緒にいられるのは、彼らが名探偵のパワーを感じられないぐらい鈍感な為なのかもしれない。(^_^;) |